慎吾担sweetieから見た 映画「凪待ち」

前回の記事はこちらhttps://shiiisw.hatenadiary.com/entry/2019/06/22/230850

 

映画「凪待ち」を見た。

 

香取慎吾といえば「いつも明るくて元気な慎吾ちゃん」というイメージを抱く人が多いと思う。

凪待ちで香取慎吾が演じる木野本郁男は、ギャンブル依存症で、ギャンブルにすぐお金を使うから恋人の愛弓に小遣いをもらっていて、その恋人と6年一緒にいるのに「結婚しよう」の言葉も言えない、そんなろくでなしな男だ。

 

どう足掻いても「香取慎吾」のパブリックイメージと「木野本郁男」はかけ離れている。

 

でも、いつも明るくて元気な慎吾ちゃんってだけじゃないのにな と思ってきた私としては、映画の話を聞いた時「やっとこの時が来たか」と本当に嬉しかった。自他ともに認める「パーフェクトビジネスアイドル」で「見てもらわないと死んじゃう」と言う彼だけど、そういう反面自分と向き合う時間がきっと人よりも長い人で、そこから生まれる孤独や苦悩、葛藤、そういったマイナスの感情を長年彼を見てきて感じてきた。もちろん彼は暗いだけの人じゃない。けど明るいだけの人でもない。今まで明るいところを見ることがほとんどだったから、みんなの想像する「慎吾ちゃん」以外の香取慎吾を見てもらえることが嬉しかった。

 

 

 

郁男にとって恋人の愛弓は「生きる術」のような存在だったように思う。ギャンブルをやめて愛弓の故郷・石巻で再出発を誓うも、愛弓は何者かに殺されてしまう。今までも愛弓に内緒でギャンブルに手を出したことはあれど、愛弓の存在がギリギリのところで郁男を踏みとどまらせていた。でもその愛弓を失い、彼は生きる術をも失ってしまった。踏みとどまらせるものが無くなり生きる術を喪った郁男は、ギャンブルにのめり込む。賭けて負けて借りてまた賭けて、の繰り返しで抜け出すことができない。職場でも上手くいかない。喧嘩する。愛弓を亡くしてからの郁男は正直見ていられなかった。ある種の狂気すら感じた。見ていて郁男の感情が流れ込んできてずっと涙が止まらなかった。

 

郁男をただのダメな男にしなかったのは香取慎吾自身の素材が活きた結果のように思う。ろくでなしだけど根っこは優しくて、色気があって、愛おしい。

 

作中では何度か東日本大震災に触れるセリフがある。震災のあとも逞しく生きる人々の姿と、恋人を喪ったあとも生きていく郁男の姿がどこか重なる。

タイトル「凪待ち」のように、愛弓を亡くしてから郁男は凪をずっと待っていたのかもしれない。大時化の中、自身も破壊を繰り返しながら、いつかやってくる凪を。

 

 

辛い場面が多いので軽率に見てとはぶっちゃけ言いづらいところはあるが、木野本郁男が必死に生きた証を劇場までぜひ見に行ってほしい。